詠われている植物は、「たちそば」と「いちさかき」、ともに実のなる植物である。
「たちそば」は、『倭名類聚抄』に柧棱(ころう)を曽波之木(そばのき)と訓んでいることから、「立ち柧棱」の意で、植物としての名は「そばのき」であろうとする。
和語のそばは、尖った角を言う。漢語の柧と棱も 共に尖った角を言う言葉で、柧棱(コロウ,guleng)は觚稜(コロウ,guleng)とも書き、宮闕の屋根の尖りを言う。しかし漢語には、柧棱と呼ばれる植物は見当たらない。
そこで、そばのきとはどんな木であったのかが問題となっており、旧来、1.ブナ、2.カナメモチ、3.ニシキギなどの説がある。
ニシキギは、枝に翼を持つので、「そばのき」の呼称にふさわしい。カナメモチは、新緑の頃に紅葉を出すという『枕草子』の記述にふさわしい。
「いちさかき」は、近江から尾張あたりの方言を考慮したうえで、「ひさかき」であろうという。『倭名類聚抄』に柃を比佐加岐と読んでいるが、漢語の柃(レイ,leng)は 今日でもヒサカキである。
みらはニラ。ミ、ニの音通から。
はじかみは、サンショウ。一説にショウガ。 |